【論文紹介】 Real-time motion retargeting to highly varied user-created morphologies
Real-time motion retargeting to highly varied user-created morphologies
概要
この論文はシムシティでお馴染みの Maxis の開発者によって投稿された2008年の論文です.Maxis の作品の一つに Spore と呼ばれる,生物の進化をモチーフにしたゲームがありますが,この Spore では微生物の状態から環境に合わせてプレイヤーが遺伝子(生物の身体の構造やトポロジ)を進化させて,いずれは高度な知能を持つ生物まで育てていきます.その生物編集機能が実によくできていて,足や手や目の数,また身体の長さなどの構造がどんなに変化しても,ある程度違和感のないアニメーションがプロシージャルに生成されています.この論文はその生物のアニメーションのプロシージャルな生成方法について解説しています.手法自体はかなり複雑なのですが,主に Inverse Kinematics を活用し,また予め定められたデータ間の関係性を利用しながらアニメーションを生成しているようです.
感想
この論文もよく,アニメーションの整合性を保ちながらアーティストがキャラクターの身体の構造を変化させる論文の参考文献に挙げられます.キャラクターの身体構造は普通変わらないので,身体の構造が変化してもアニメーションの整合性が取れていることに感動しました.この Spore のキャラクターモデルは後の Disney Research Zurich で活躍される Moritz Bächer さんの論文に影響を与えています.
【論文紹介】Motion-guided mechanical toy modeling
Motion-guided mechanical toy modeling
概要
Peking University, Hangzhou Normal University, Microsoft Research Asia, Microsoft Research による2012年の研究です.多くの Character Animation に関する Fabrication の研究はこの論文から派生しているのではないかと思います.アーティストが形状とそれに対する動きをパラメータとして入力すると,その動きを実現するオートマタ(からくり人形)のための機構を自動的にデザインしてくれます.デザインされた機構は3Dプリンタなどの Additive Manufacturing 技術を用いて簡単に具現化が可能です.初期化時の最適化には主に Simulated Annealing 法が用いられ,部品同士が衝突しない範囲で類似度が高くなるように(相違が低くなるように)コスト関数が設定されています.最終的な微調整には CMA-ES 等の確率的最適化を活用しているそうです.
感想
鬱病になって世の中に楽しいものがあるとは思えなくなったことがあります.また,楽しいと思えたときに,その感覚が一日後にも続いていないのではないか,そもそも自分の”面白い”や”楽しい”になんの信憑性もないのではないかと自信を失いました.そこでこの論文に出会いました.自分の求めていた研究だと思い,Computational Fabrication 研究の道に進むことに決心させてくれた論文の一つです. アーティストが実現したいアニメーションに対して,理想的な機構を計算するフレームワークの基本をこの論文が指し示してくれたのではないでしょうか.