Takuto's blog

不定期にゆるく Character Animation と Computational Fabrication 関する有名な論文を紹介していきます.

【論文紹介】LinkEdit: interactive linkage editing using symbolic kinematics

LinkEdit: interactive linkage editing using symbolic kinematics

Moritz Bächer, Stelian Coros, and Bernhard Thomaszewski. 2015. LinkEdit: interactive linkage editing using symbolic kinematics. ACM Trans. Graph. 34, 4, Article 99 (July 2015), 8 pages. DOI: https://doi.org/10.1145/2766985

概要

二次元のリンク機構の計算を Closed-Form Kinematics のような解析的にわかる形で高速に行うことで,リンク機構の高度な編集をインタラクティブにできることを提案した2015年の論文です.

感想

リンク機構の位置計算はこれまで最適化計算を利用して解くことが多かったのですが,この論文ではグラフ構造のようなものを使い効率的に解いています.運動の軌跡を,リンク機構がリアルタイムに変わりながら直接いじれてしまう様子はインパクトがありますね.

【論文紹介】 Authoring motion cycles

Authoring motion cycles

Loïc Ciccone, Martin Guay, Maurizio Nitti, and Robert W. Sumner. 2017. Authoring motion cycles. In Proceedings of the ACM SIGGRAPH / Eurographics Symposium on Computer Animation (SCA '17), Stephen N. Spencer (Ed.). ACM, New York, NY, USA, Article 8, 9 pages. DOI: https://doi.org/10.1145/3099564.3099570

概要

モーションサイクルは通常の途切れたアニメーションではなく,常に動き続けて繰り返すアニメーションです.歩行アニメーションなど,様々な運動が繰り返し運動になります.この論文では,モーションサイクルをユーザーが簡単に編集できるインタフェース開発手法を提案しています.マウスやモーションキャプチャーなどの計測装置の繰り返し運動を,自動的に周期を判定して抽出後,位置と時間の補完手法を提案し,なめらかな編集を可能としています.

感想

繰り返しのアニメーションを編集することは,オートマタの研究と近いものを感じました.オートマタも基本的には繰り返し運動によりキャラクターアニメーションを見せるので,本手法が利用できるのではないかと思っています.

【論文紹介】Functionality-aware retargeting of mechanisms to 3D shapes

Functionality-aware retargeting of mechanisms to 3D shapes

Ran Zhang, Thomas Auzinger, Duygu Ceylan, Wilmot Li, and Bernd Bickel. 2017. Functionality-aware retargeting of mechanisms to 3D shapes. ACM Trans. Graph. 36, 4, Article 81 (July 2017), 13 pages. DOI: https://doi.org/10.1145/3072959.3073710

概要

キャラクタの限られた体積の中に,機能的な機構を埋めるための2017年の論文です.実は 3D メッシュの中にものを入れる作業は様々なパターンが考えられ計算量的に難しいのです.そこで本論文では Differential Manipulation という手法の導入で計算量を減らしています.

感想

Differential Manipulation の使用を知ったときに一気に興味がわきました.Differential Manipulation の内容自体はわからないのですが,形状の特徴を保ったまま変形するような操作が得意なようです.今後も,Differential Manipulation を使った論文が出てくるのではないでしょうか.

【論文紹介】 A computational design tool for compliant mechanisms

A computational design tool for compliant mechanisms

Vittorio Megaro, Jonas Zehnder, Moritz Bächer, Stelian Coros, Markus Gross, and Bernhard Thomaszewski. 2017. A computational design tool for compliant mechanisms. ACM Trans. Graph. 36, 4, Article 82 (July 2017), 12 pages. DOI: https://doi.org/10.1145/3072959.3073636

概要

Compliant Mechanisms は弾性を持つ構造です.これまでジョイントが必要だったものを,材料そのものでジョイントと同じ効果を出してしまう2017年の論文です.当初は CMA-ES などの確率的最適化手法を利用して破壊しないようなつなげ方を算出しようと試みていたようですが,計算時間がかかるため材料力学的な観点からモデル化しています.これにより,3D プリンタのような限られた造形の表現力の中でも,ジョイントのような複雑な機構を直接印刷が可能になります.

感想

直接ゴムのような弾性のある構造物を印刷する技術が発展してますが,有効に活用する方法が見つかっていないのが現状です.Computational Fabrication のトレンドとして,いかにして柔らかい素材や材料とを Additive Manufacturing 技術と融合があります.今後も”柔らかい素材”との融合はトレンドとなっていくでしょう.それにしてもこの Vittorio Megaro という方,同時に SIGGRAPH の論文を主著で2本通していて羨ましいです.

予想ですが,Compliant な構造を利用するはロボット分野の二足歩行分野でも注目していて,3D プリンタで二足歩行ロボットを実現を目指しているのでは?と思っています. Compliant な歩きを実現しているのは Oregon State University の Cassie を思い出しました.

このロボットの前進のロボットの論文では,二足歩行ロボットのバネを利用したシンプルなモデル化について議論していました.興味ある方はぜひ見てみてはいかがでしょうか.

ATRIAS: Design and validation of a tether-free 3D-capable spring-mass bipedal robot

Hubicki, Christian, et al. "ATRIAS: Design and validation of a tether-free 3D-capable spring-mass bipedal robot." The International Journal of Robotics Research 35.12 (2016): 1497-1521.

【論文紹介】Computational design of mechanical characters

Computational design of mechanical characters

Stelian Coros, Bernhard Thomaszewski, Gioacchino Noris, Shinjiro Sueda, Moira Forberg, Robert W. Sumner, Wojciech Matusik, and Bernd Bickel. 2013. Computational design of mechanical characters. ACM Trans. Graph. 32, 4, Article 83 (July 2013), 12 pages. DOI: https://doi.org/10.1145/2461912.2461953

概要

2013年の論文です.アーティストが指定した二次元平面上の軌跡に対し,予め用意したデーターベースの中からベストな機構を引っ張ってきて,さらに最適化手法 quasi-newton 法 などを用いてリンク位置や長さの微調整を行います.ギアの最適化やレイヤー配置の問題など様々な問題も同時に解いています.これにより,複雑な動きのあるキャラクタでも再現がしやすくなりました.

感想

一番好きな論文,つまり研究をはじめるきっかけを与えてくれた論文のうちの一つです.僕が注目している著者は,Stelian Coros さんと Bernhard Thomaszewski さんです.この二方はこの論文の執筆後も様々な機構や技術に関する論文を公開しているので,チェックしてみると面白いかもしれません.

【論文紹介】 Designing and fabricating mechanical automata from mocap sequences

Designing and fabricating mechanical automata from mocap sequences

Duygu Ceylan, Wilmot Li, Niloy J. Mitra, Maneesh Agrawala, and Mark Pauly. 2013. Designing and fabricating mechanical automata from mocap sequences. ACM Trans. Graph. 32, 6, Article 186 (November 2013), 11 pages. DOI: https://doi.org/10.1145/2508363.2508400

概要

モーションキャプチャによって計測した身体の三次元位置を,オートマタ(西洋からくり人形)で再現するための2013年の論文です.身体の動きは二次元平面上の動きに近似され,ギアやリンク機構の組み合わせにより周期的に似たような動きが再現できるように配置します.最適化には MATLAB の最適化ツールボックスを使用したと記述がありますが,具体的にどの手法が使われたかはいまはまだわかっていません.他の論文と同様に,類似度をコスト関数として設定することで配置の問題を解いています.

感想

これも良く引用されているのを見ます.僕もオートマタの研究をはじめましたが,いわゆるオートマタを全面に押し出した Fabrication における最初の論文ではないでしょうか.純粋なギアを用いて角度制御しているため,どうしても動きに制限が発生し,もとのデータとずれやすいのが課題でしょうか.ただ,すべてのメカニズムを内部に押し込みつつ,豪華な動きを実現する素晴らしさがあります.

【論文紹介】 Fabricating articulated characters from skinned meshes

Fabricating articulated characters from skinned meshes

Moritz Bächer, Bernd Bickel, Doug L. James, and Hanspeter Pfister. 2012. Fabricating articulated characters from skinned meshes. ACM Trans. Graph. 31, 4, Article 47 (July 2012), 9 pages. DOI: https://doi.org/10.1145/2185520.2185543

概要

この論文では,仮想的な空間いわゆる 3DCG におけるキャラクタのメッシュを3Dプリンタのような Additive Manufacturing 技術によって製造するための課題,物理的に実現可能な関節の生成に取り組んだ論文です.3DCG のキャラクタは一般的に関節の構造を持ち,ボーンやリグと呼ばれる姿勢を表す情報によって,3D のメッシュの頂点座標を動かしています.ボーンを操作した際にメッシュの頂点がどのように移動させるかは様々な手法があるのですが,本論文では動作が軽くまた広く知られている LBS (Linear Blend Skinning) に基づいて議論してます.本論文ではスキニングの際に良く頂点が移動する場所は,3Dプリンタの ABS 樹脂のような硬い素材では実現不可能であると考え,その場所に蝶番やピンのようなジョイントを配置することで,3DCG と似たスキニングができるように工夫しています.

感想

複数の 3D メッシュ情報のからボーン,スケルトン情報を抽出する研究は時々見つかるのですが,この論文は印刷可能にするまでに落とし込むところまで議論しているところが面白いです.筆者の一人は当時ハーバード大学,後に Disney Research Zurich で活躍される Moritz Bächer さんです.僕はこの論文を読んで,はじめて Computational Fabrication と Character Animation の融合には,関節化 (Articulation) が本質的に関わっているのだと確信しました.